2018地域CL決勝ラウンド最終日雑感。

刈谷4-1宮崎

 

【宮崎】

スタートから刈谷のテンションに圧倒され1点を失い、手を変えながら必死に流れを引き戻そうとしたが刈谷FW西原のスピードにCBが全く対応出来ずチェ・ボンウォンが33分で黄色2枚を献上し退場。サイドからの攻撃に活路が見えて、刈谷の目が外に行ったところを逆用して中央から繋いで1点を奪ったのが精一杯。残念ながら3連敗という結果となってしまった。最初からもっとこれまでの戦いを捨てて守備的な手を尽くしていたら、佐野の調子が万全であったら、たらればを言えば切りはないのかもしれない。しかし、そのたらればを足し込んでもこの中で2位以内になる絵は自分には描けなかった。それでも出来る手は尽くして戦い抜いた事は必ず来年以降に生きてくると信じたい。

 

刈谷

試合自体は満点の出来。この日初スタメンの浜田は点を奪い、西原はスピードで宮崎から退場者を引き出す事に成功。失点をした時間帯はやや左サイドが押されたが、そこにすぐ交代選手を投入して封じ、最後は強みである走力差で圧倒して追加点を奪い目標の2点差以上をクリアした。ただ、それでも結果として2位には届かなかった。恐らく昨年の決勝ラウンドに今年の刈谷がいたら1位で抜けていたと思う。最大の不運は松江と鈴鹿と同じ年になってしまった事と言っても過言ではない。

それでもなお理由を求めるのならば、それは鈴鹿との直接対決で敗れた事であり、更に掘り下げるなら、松江と当たって疲弊した状況で鈴鹿との直接対決を迎えたという試合順、チームとして上昇するきっかけが全社と鈴鹿より一足早かった点、リーグ戦の直接対決で勝った事で逆にマークされる立場に入れ替わったこと、いずれも些細だけどそれが大きな差になってしまった。それこそがこの大会の持つ難しさであり残酷さなのだろう。

必ず刈谷はまたここに戻ってくる。その時こそは笑顔で終わって欲しい。今はそれしか考えられない。

 

松江2-0鈴鹿

鈴鹿

メンバーがガラッと変わり、これまでの空中戦から一転足元で繋ぐサッカーで臨むも松江の前にほぼ完封されて終了。やはり一昨日に決めてしまった影響は大きく出ていたと言わざるを得ない。もし両チームとも万全の状態ならどんな試合になっただろう。松江の攻めを鈴鹿は耐えられたのか。そして鈴鹿の空中戦は松江に風穴を開けられたのか。その答えは来年の楽しみにとっておこう。

ここまでの経緯を改めて振り返るとターニングポイントは一次ラウンドの浅間戦。前半浅間のスピードにCBがやられ、藤井が1枚イエローを貰った場面。ここで浅間が徹底して藤井のところを突いて退場に追い込まれていたら、もしくは後半から空中戦主体に変えた時に運悪く点が奪えていなかったら。そのどちらかが起こっていたら恐らく鈴鹿はここにはいなかっただろう。しかし、鈴鹿はこのチャンスの細い糸を鷲掴みにして手繰り寄せ、更にチームとして最後のひと伸びとなる自信を持って臨むことの出来る戦い方を手にした。そういう意味であの一次ラウンドは鈴鹿にとって大きな意味を持っていたと思う。

改めておめでとうございます。そして胸を張って「次の10年」に向かって突き進んでください。

 

【松江】

これまで攻撃の核となっていた宮内の出場停止。正直なところ全社、決勝ラウンドを見てきてずっと気がかりだった頻繁にジャッジに対して不平を示す彼の弱みがここに来て露呈した結果となってしまった。代わりに右サイドに入った赤尾はクロスの精度はあるが宮内ほど中や逆サイドまで動くタイプでは無い。それもあってか、この日の松江は細かいパスで一つ一つ相手のラインを突破するのではなく、一本のパスで2つのラインを一気に突破するようなシンプルな攻めを構築する。そして、得点はいずれもセットプレーだが、流れの中でも決定機は圧倒的に松江の方が上。

弱点と目された後半も松江の方が押していたのだが、観戦仲間の指摘が一つ松江の持つ強度のヒントを与えてくれた。ピッチを縦に5つのゾーンに区切った所謂「5本のレーン」。詳細は他のメディアに任せるが、これを完全に意識したポジショニングを攻守両面で構築しているのが見えてきた。攻めでいえば、これまで見てきた逆サイドへのそこにいるのが決まっているかのようなサイドチェンジ、こぼれ球に対する的確なポジショニング、宮内が見せる頻繁なポジションチェンジに対しても崩れないバランスの全てが同じ考え方をベースに成り立っているのがよく分かる。守備でもアンカーの位置にいる田平が奪われた後に危険な「薄い」レーンを埋めてカウンターの芽を的確に塞いでいた。これまでも同じ考え方でプレーはされていたのだろうが、宮内の不在によりやや単純化された事でそれが鮮明に浮き上がってきた結果となった。恐らく、これ以上に細かい事を自分が気付かないだけでもっと突き詰めているのだろう。それをこの環境と限られた時間で構築できた事は脅威すら感じる。間違いなく自分がこれまで見てきた地域CLで最強のチームだったと断言出来る。

これだけのサッカーをどうやってこのカテゴリのチームに落とし込んだのか、そのメソッドを監督、スタッフに何処でも良いから取材して欲しいし、出来るなら何らかの形で残して欲しい。これは絶対にこの国のサッカーの財産になる。そして、このサッカーを継続するであろうことは疑い無いだけに、JFLという別の意味で過酷な環境下でどこまで戦えるか本当に楽しみである。改めておめでとうございます。そしてこれだけのサッカーを見せてくれて心からありがとうございました。