2014/4/12 関西サッカーリーグ開幕戦 バンディオンセ加古川対奈良クラブ

加古川2-2(2-1)奈良C(@日岡山公園グラウンド)

 

加古川は前半から極端にラインを下げDFとMFでブロックを作り、奪えば前線に走る堂柿に当てる戦術を徹底。堂柿が裏に抜けられればそのまま、ボールを受ける形で持てばそこから中盤のラインが押し上げ堂柿からのマイナスのボールを受け、細かくサイドへ展開する。その展開からセットプレーを拾い、精度の高いプレースキックを持つ辻村隆が良いボールを供給して効率良く2得点。狙い通りの戦い方で試合を優位に進める。

 

一方の奈良CはDFラインであてもなく左右でボール交換を繰り返し、時折サイドから縦に入れて打開を図ろうとするのが精一杯。しかし2失点を喫した辺りから、中央から縦に単純にボールを出して無理矢理こじ開けようと試みる。これが意外に効果的に働き、前半ロスタイムにはFWがポストになり、ボールをはたいてDFが塞ぐコースをずらすと小野が綺麗なミドルを叩き込み前半を2-1で折り返す。

 

後半に入っても加古川は徹底してラインを下げてのカウンター狙い。奈良は中盤に桜井を入れるも、彼が捌いてボールを供給するはずの両サイドにスペースが出来ないため持ち味を活かせない。更に奈良は岡山を投入し最前線に配置。瀬里や小野へ落として点を奪うべく、岡山をターゲットに放り込みを徹底して1点を奪いに行く。ここまで我慢をしてきた加古川DF陣だが、度重なる放り込みと奈良C前線の一点集中の圧力に対して徐々にゴール前へと人が集中してくる。これを桜井は見逃さなかった。

 

ぽっかりと空いた左サイドに進出してきた森田へサイドチェンジのボールを送ると、これをフリーで受けた森田が中央へ折り返す。これをゴール前に走り込んできた岡山が合わせて同点に追い付く。試合はこのまま2-2で終了。開幕戦は勝ち点1ずつを分け合う結果となった。

 

加古川はスピードと突破力に優れる堂柿を最大限に活かすべく、元々得意としていたDFラインと中盤で強固なブロックを作ってのカウンターを先鋭化してきた。「戦術:堂柿」とはよく言ったものである。今年はこれをどう進化させるかが鍵になるのだが、個人的には加古川のこれからの狙いは2つ考えられる。

 

1つは堂柿が受けて後ろへはたき2列目の新保あたりが受けて展開する形。その目的は一旦受けてタメを作り、中盤を押し上げ攻撃の人数を増やすことにある。実際にサイドが上がって、細かいパス交換でゴール前に迫る形は何度か見受けられた。もう1つはカウンターの選択肢の増加。サイドでの突破力に優れる辻村兄弟を獲得したのも、彼らがカウンターの際サイドに走ることで中央だけに絞らせないようにしたいのではないかと考えるのだ。こちらはそこまで実践で見られなかったのであくまで推論となるのだがFC大阪から獲った森脇も含め前線の層を厚くしたのも堂柿一人だけに頼らない攻めを作りたい意図はあるのではないだろうか。

 

一方の奈良Cは引いて守る加古川に対して、結果として中央からこじ開けて2点を奪うことは出来た。ただ、この戦い方が本来狙っていた戦い方なのかと言われると疑問符が浮かぶ。2点を奪われるまでの時間帯は完全に加古川にボールを持たされ、DFラインをただボールが右往左往するだけであった。同点に追い付いた形が昨年最後水越監督に代わってある程度の完成を見た、桜井からサイドへ捌いて攻めるサッカーだったところも現状での攻めの形が見えないことをより鮮明に浮き上がらせた。

 

そうなると前半2点を奪われるまでの時間帯、結果として攻める形が出来なかったのは何故なのか。ここがポイントになるのだろう。考えられるのは攻めの形がまだ構築段階で手つかずという考え、それとも相手にボールを持たせて奪ってから攻めるサッカーが軸となるから引いた相手に対する攻めの構築が不十分と言う考え。流石に前者ということは考えづらいので、後者と考えるのが今は妥当なのか。次節以降の相手はここまで引いてくるチームはそういないはずなので、その答えは近いうちに分かるであろう。