2016/11/25 全国地域サッカーCL決勝ラウンド ヴィアティン三重対三菱水島FC

三重2-1(1-0)水島(@ゼットエーオリプリスタジアム

 

決定力のあるFW高瀬をトップに、そのすぐ下に宮澤を配し、この2人へのカウンターをちらつかせながらしっかり守る姿勢を見せる水島。それに対して三重はDFラインで左右に振って水島守備陣を動かし、トップの藤牧がDFの間に入り込んだところ目がけてロングボールを入れていく。三重は更に右サイドの寺尾の突破も絡めて攻めを見せ、徐々に押し込んでいくと試合が動いたのは27分。三重はCKから何度かこぼれ球を拾い波状攻撃を見せると、寺尾のミドルが水島DFに当たってコースが変わりそのままゴールへ入り先制点を奪う。ここから三重は放り込みを止めて余裕を持ってボールを回しながら押し上げサイドを攻めていく。水島は人数をかけて高瀬を封じにかかる三重の守備をこじ開けきれず前半はそのまま1-0三重リードで終了。

 

後半も三重は水島のカウンターを食らわないように安全なライン取りをしながら、加倉と和波を軸に左を攻めていく。水島は宮澤が外に流れ飛び出してきた山下と高瀬が中で合わせに行く形も見せながら打開策を図るも効果的には働かない。しかし試合はワンプレーをきっかけに大きく変容する。77分、水島の左サイドハーフウェイライン付近からのセットプレー、大きく弧を描いて放り込まれたボールに対しゴール前でニアを取りきった宮澤が押し込んで水島が同点に追いつく。思いがけぬ失点に三重はリズムを崩し、ここから一転水島の猛攻が始まる。三重はここでFW坂井を投入。坂井がサイドに流れそこからの攻めに活路を見出す。そして89分、右サイドを抜けた坂井の折り返しに中央で合わせたのは藤牧。値千金の勝ち越しゴールで2-1。このままロスタイムを凌ぎきり三重が2-1勝利。貴重な初日の勝ち点3をもぎ取った。

 

水島は高瀬、宮澤という優れたアタッカー2人が常に前線で張って隙あらば裏を取りにいく形を徹底することで、相手のDFラインを押し下げ、更にラインが下がって出来たバイタルのスペースに中盤の山下が押し上げてことで二次攻撃に繋げていく攻めが非常に機能的に見えた。カウンター一本の水島がここまで勝ってきた裏には、自分達のペースを握るための的確なロジックがあったと言えるだろう。実際にこの日も三重のDFラインも思い切って押し上げることをしてこなかった。しかし、三重はそこを分かった上で対策をきっちり敷いてきた。ボランチに守備的な稲森と川村を配置し、守備ではバイタルのスペースを埋める役目、攻撃ではサイドへの散らしに比重を置かせて主戦場をサイドに持って行く。これが見事に成功し、結果試合をコントロールしていたのは三重の方であった。

 

それでも際どい勝負になったのは水島の水際での粘り強い守備の賜物。特に同点に追い付いた時の三重の混乱ぶりを見た時はこのまま逆転するシナリオも見えていた。この点も水島の負けてなお強いという印象を抱かせるに十分なものであった。それでも最後三重が勝ち越せた要因を探るとすれば、FW藤牧のプレーとなるのだろう。決定力という点では水島の高瀬も素晴らしいものがある、いや、それ単体で見れば高瀬の方が上かもしれない。しかし藤牧の素晴らしい所は90分相手DFに圧力をかけ疲弊させられること。粘り強い水島守備陣が最後の最後で根負けした。あの決勝点は自分にはそう思えたゴールであった。

 

水島はここまで来たことが十分納得出来るサッカーをしていた。しかしそれをこの日の三重は上回った。夏に東海リーグで見た時から格段に強くなっている。そう思わせるに十分な90分であった。