2016/11/26 全国地域サッカーCL決勝ラウンド 三菱水島FC対鈴鹿アンリミテッドFC

鈴鹿3-0(2-0)水島(@ゼットエーオリプリスタジアム

 

 4分にいきなり試合は動く。鈴鹿は右サイドに流れた小澤のクロスをファーサイドに飛び込んできたボランチ矢野が上手くコントロールして押し込み先制点を奪う。更に16分には低い縦のボールを受けた北野が反転してDFをかわし右45度から一撃。これで2-0。水島は両サイドの中盤を高くして攻撃に厚みを持たせようとするも、戻りが遅く、そのスペースを埋めようとしたサイドバックの裏を狙われる悪循環に陥り有効な手を打てないまま2-0で前半終了。

 

半落ち着きを取り戻した水島は両サイドのポジショニングを元に戻し、一旦2トップの高瀬か宮澤に当てて押し上げを待つ形に変えてきた。ボランチの山下も前がかりに構え、これで水島は何度か決定機を掴むも鈴鹿守備陣の踏ん張りとGK岡田の好守に阻まれ得点出来ず。更に中川を下げ、パス出しの出来る鶴丸投入し、攻撃の起点を増やしにかかるもゴールには届かない。そして83分、中央からやや左の小西に渡し、最後はオーバーラップしてきた左サイドバックの野口に絶妙のスルーパスを通してゴール。最後まで諦めず前線へボールを運んだ水島だったが1点は遠くそのまま3-0で試合終了。鈴鹿が3-0で快勝し勝ち点3を勝ち取った。水島はこれで3位以下が確定。一方の鈴鹿は明日に三重戦がPKでも何でもとにかく勝った方が2位以内となる運命の一戦を迎える事となった。

 

8人が綺麗に2ラインでブロックを敷く水島の守備。これを崩したのは局地戦での数的優位を得る事。鈴鹿の1点目はそれを矢野の3列目からの飛び出しで生み出し、2点目は北野の単独突破という形で実現。手法こそ違えど、それぞれ模範解答と言えるプレーを見せてくれた。対人に強い守備含めて鈴鹿としては手が合う相手だったとは言えるだろう。ただ、それをしっかりとチームとして意識を合わせ完遂した点はこの結果に相応しい戦いぶりであったと感じている。また余談ではあるが、この日の北野が見せた抜け出しやサイドバックの裏を突くプレーを見て、昨日の今治は小澤へのマンマークに目が行っていたが、北野への対応についてもかなり策を巡らせていたのではと感じている。その点は後日映像で確かめてみても良いのかもしれない。

 

水島は先に点を取られる展開になってからの戦術を大きく変えることは無かった。これについては変えなかったという方が正しいだろう。後半そのままの戦いで攻勢に出たところからも、この戦い方を貫いたのは正解だと思うし、それでも及ばなかったのも事実。また、昨日と比較して度重なる連戦で出足の部分で動きに鋭さを欠いていた部分も見受けられた。その意味でもこれが限界だったのかもしれない。ただそれで水島のサッカーの価値は決して下がった訳ではないことは記しておきたい。

 

 

2016/11/26 全国地域サッカーCL決勝ラウンド ヴィアティン三重対FC今治

今治3-0(1-0)三重(@ゼットエーオリプリスタジアム

 

この日も今治は三重の攻撃の核である藤牧に斉藤をマンマークで付ける布陣で三重の攻撃を封じにかかる。更に今治は三重の右サイドの寺尾と右ボランチ稲森のゾーンに狙いを定め、そこで奪ってのショートカウンターで左ウイングの長島のドリブルを使ってゴールに迫る。今治優勢の中、先制点は26分、右サイドやや遠目からのフリーキックがファーに流れると、そこに中野が飛び込みヘッドで押し込む。更に攻勢に出る今治はなおも左サイドから攻めると、42分には三重右サイドバックの田中が2枚目の警告で退場。三重はボランチの稲森をサイドバックに下げ右サイドの寺尾をボランチに回し応急処置をしてその場を凌ぐも、数的優位を得た今治が1-0とリードして前半終了。

 

後半三重は1.5列目の岩崎を下げ右サイドに石川を入れ4-4-1にして様子を伺う。しかし今治攻勢は止まらない。50分にクリアボールを拾った桑島がゴールを決め2-0。これで勝負はほぼ決した。あとは藤牧への縦のボールを冷静に対処しつつ、前掛かりな三重の裏を繋いで崩していく。駄目押しの3点目は74分。裏に抜け出した選手を三重DF加藤がスライディングでうまく止めるも勢い余ってエリア内ハンド。これを中野がきっちり決めて勝負あり。3-0で今治が勝利し連勝で勝ち点を6に伸ばすとともに、、第2試合の結果によりこの日で決勝ラウンド2位以内が確定した。

 

前半の今治の狙いが完璧に嵌った時点で勝負は決した。三重守備陣の弱点である右サイドバックの田中を左ウイングの長島を使って一点集中で攻めに行き、前半で退場まで追い込んだ。そこを突くために藤牧にマンマークを付け、縦のボールを入れさせないようにしつつ、突っ掛けに行きやすい右サイドの寺尾の所で網を張りショートカウンターに繋げるところまで周到に仕掛けを準備していたと思われる。勿論そのタスクを完遂した左ウイングの長島と左サイドバックの中野の働きは特筆もの。特に長島はこのチームで恐らく唯一の自分で仕掛けて打開出来る選手だったのではないかと感じているが、その彼の特性を最大限に生かし切った見事な戦術であった。予選ラウンドでは研究され敗戦となった今治が決勝ラウンドで逆に研究手に嵌めた。そんな試合であった。

 

一方の三重とすれば何が出来たのか。個人的には今治の真の狙いが寺尾と稲森のゾーンだと分かった時点で、無理してでも藤牧に当てる方が良かったのではと思っている。少なくともマンマークプラスCBの2枚で寄られてもある程度耐えられたと思うし、何より今治を疲弊させる事ができた。この日も楽な展開にも関わらず今治の脚は後半15分から一気に落ちていた。三重は90分をフルに使って勝ち点を取りに行く戦いを狙っていたと思うのだが、その狙いと戦い方にずれがあったように思えてならない。また、厳しい言い方となるが、田中の2枚目のファウルはあらゆる事を考慮しても絶対にやってはいけないプレー。HTでは交代だろうと踏んではいたのだが、思い切って前半のうちに切っても良かったのだろう。この大会は最大限のリスク管理が求められる大会だという事を改めて実感させられた。

 

 

2016/11/25 全国地域サッカーCL決勝ラウンド FC今治対鈴鹿アンリミテッドFC

今治2-1(1-0)鈴鹿(@ゼットエーオリプリスタジアム

 

序盤から鈴鹿今治のボール回しのテンポについていけず守備陣がマークを外してしまう場面が目立つ。ペースを握り何度か決定的な場面を作った今治は19分、左ウイングの小野田からオーバーラップしてきた中野へのスルーパスが通り、中野の折り返しをファーで桑島が合わせ先制する。今治鈴鹿の攻撃の基点となる小澤に水谷を完全なマンマーク役として付け、鈴鹿の攻撃を封じることに成功。鈴鹿はFW北野が裏に抜けるプレーやセットプレーなどを仕掛けていくも、有効な打開策を見出すことができないまま前半を終える。

 

1-0今治リードで迎えた後半、鈴鹿は小澤をトップの位置に上げることでマークに付く水谷をDFラインに吸収させるとともに、早めに前線へハイボールを入れてバイタルのボールを拾い攻撃を繰り返していく狙いを見せる。そして57分、右サイドの高い位置で得たFKに吉川がヘッドで合わせて同点に追いつく。更に鈴鹿は長身の吉川と角口に代えて小西とスピードのある泉を投入。更に縦に早い攻めを見せようとする。しかし66分、今治は左サイドから中央に繋いで桑島がシュート、鈴鹿GK岡田の逆を突いたボールはゴールへ吸い込まれ勝ち越しの2点目を奪い取る。最後まで追いすがる鈴鹿の追撃を振り切り今治が2-1で勝利。勝ち点3を勝ち取った。

 

鈴鹿は前半今治のパス回しに守備陣が振り回され過ぎたこと、そして後半に入ってからの攻撃についての方針が悔やまれる。前者については人について守りに行ってしまう傾向が見られる守備のスタイル上仕方のない部分もあるのかもしれないし、後半今治のペースが落ちてからある程度対応できていただけに言うのは酷な部分もあるだろう。ただ、あそこで前半だけでも割り切って外を捨て中央に人数をかけるとか何らかの修正は必要だったのではなかろうか。後者については、もう少し小澤の正確なキックをいかしたセットプレーに活路を見出しても良かったのではと感じている。その意味でファウルの取れる泉の投入は正解だったと思うが、せめて角口だけでも残す選択肢はなかっただろうか。どこかベンチの意図とプレーにズレが見られた所が明日以降どう影響するか気掛かりでもある。

 

今治としては、守備において小澤に水谷をべったり貼り付けるというなりふり構わぬ手段を見せる事で、逆に自分達のやりたい攻撃を出来る余地を作る事が出来たのが大きかった。基本はパスで相手のDFを動かし、それによって出来たスペースに別の選手が飛び込みそこへパスを送る。これを繰り返して崩していくというのが狙いなのだろう。その狙いは特に前半思い通りに運び、ゴールにも結びついた事が結果として勝利に繋がることとなった。あとは、スペースに繰り返し走り込むプレーを要求され、非常に消耗が激しい戦術に見えるだけにあと2日をどう乗り切っていくか。ここが鍵を握ることになるだろう。

2016/11/25 全国地域サッカーCL決勝ラウンド ヴィアティン三重対三菱水島FC

三重2-1(1-0)水島(@ゼットエーオリプリスタジアム

 

決定力のあるFW高瀬をトップに、そのすぐ下に宮澤を配し、この2人へのカウンターをちらつかせながらしっかり守る姿勢を見せる水島。それに対して三重はDFラインで左右に振って水島守備陣を動かし、トップの藤牧がDFの間に入り込んだところ目がけてロングボールを入れていく。三重は更に右サイドの寺尾の突破も絡めて攻めを見せ、徐々に押し込んでいくと試合が動いたのは27分。三重はCKから何度かこぼれ球を拾い波状攻撃を見せると、寺尾のミドルが水島DFに当たってコースが変わりそのままゴールへ入り先制点を奪う。ここから三重は放り込みを止めて余裕を持ってボールを回しながら押し上げサイドを攻めていく。水島は人数をかけて高瀬を封じにかかる三重の守備をこじ開けきれず前半はそのまま1-0三重リードで終了。

 

後半も三重は水島のカウンターを食らわないように安全なライン取りをしながら、加倉と和波を軸に左を攻めていく。水島は宮澤が外に流れ飛び出してきた山下と高瀬が中で合わせに行く形も見せながら打開策を図るも効果的には働かない。しかし試合はワンプレーをきっかけに大きく変容する。77分、水島の左サイドハーフウェイライン付近からのセットプレー、大きく弧を描いて放り込まれたボールに対しゴール前でニアを取りきった宮澤が押し込んで水島が同点に追いつく。思いがけぬ失点に三重はリズムを崩し、ここから一転水島の猛攻が始まる。三重はここでFW坂井を投入。坂井がサイドに流れそこからの攻めに活路を見出す。そして89分、右サイドを抜けた坂井の折り返しに中央で合わせたのは藤牧。値千金の勝ち越しゴールで2-1。このままロスタイムを凌ぎきり三重が2-1勝利。貴重な初日の勝ち点3をもぎ取った。

 

水島は高瀬、宮澤という優れたアタッカー2人が常に前線で張って隙あらば裏を取りにいく形を徹底することで、相手のDFラインを押し下げ、更にラインが下がって出来たバイタルのスペースに中盤の山下が押し上げてことで二次攻撃に繋げていく攻めが非常に機能的に見えた。カウンター一本の水島がここまで勝ってきた裏には、自分達のペースを握るための的確なロジックがあったと言えるだろう。実際にこの日も三重のDFラインも思い切って押し上げることをしてこなかった。しかし、三重はそこを分かった上で対策をきっちり敷いてきた。ボランチに守備的な稲森と川村を配置し、守備ではバイタルのスペースを埋める役目、攻撃ではサイドへの散らしに比重を置かせて主戦場をサイドに持って行く。これが見事に成功し、結果試合をコントロールしていたのは三重の方であった。

 

それでも際どい勝負になったのは水島の水際での粘り強い守備の賜物。特に同点に追い付いた時の三重の混乱ぶりを見た時はこのまま逆転するシナリオも見えていた。この点も水島の負けてなお強いという印象を抱かせるに十分なものであった。それでも最後三重が勝ち越せた要因を探るとすれば、FW藤牧のプレーとなるのだろう。決定力という点では水島の高瀬も素晴らしいものがある、いや、それ単体で見れば高瀬の方が上かもしれない。しかし藤牧の素晴らしい所は90分相手DFに圧力をかけ疲弊させられること。粘り強い水島守備陣が最後の最後で根負けした。あの決勝点は自分にはそう思えたゴールであった。

 

水島はここまで来たことが十分納得出来るサッカーをしていた。しかしそれをこの日の三重は上回った。夏に東海リーグで見た時から格段に強くなっている。そう思わせるに十分な90分であった。

 

2016/11/5 The KSL Cup 予選リーグ第3節 ディアブロッサ奈良対St. Andrew's FC

D奈良2-4(0-1)Andrew's(@水口陸上)

 

試合はAndrew'sがボールを持ち縦に入れてくる攻めに対し、D奈良がカウンターからFW島岡に預け裏に抜ける新家と崩すという流れ。先制したのはAndrew's。7分に左サイドの裏を抜けた渡辺の折り返しを青山が合わせてゴールを奪う。そこからは一進一退のまま1-0で前半終了。

 

後半に入り、55分に青山が中央を抜け2点目を奪う。更にD奈良守備陣の寄せが緩くなった所を突いてAndrew'sが更に66分に青山がハットトリックを達成すると、立て続けに68分には山田が4点目を奪う。このままAndrew'sの圧勝で終わるかと思われたが、D奈良もここから反撃。72分に新家が1点を返すと、80分には裏を抜けた細川堅から最後は新家が決めて2点差に迫る。しかし反撃もここまで。4-2でAndrew'sが逃げ切り勝利を収めた。

 

D奈良としては収穫とすれば4-0から主導権を握り返して2点を奪った事。一方の課題としてはトップの島岡の所でボールが収まらなかった時の次の手をどう取るかという点だろうか。また、このカップ戦を通して若手戦力を積極的に起用してきた点については、相応の成果はあったように感じている。来年に向け結果は伴わなかったが、意味はあったカップ戦ではなかっただろうか。

 

Andrew'sは一応勝てば予選リーグ突破の目があっただけに、前半から飛ばして点を奪ってきた中で4点を取れたことは収穫。しかし最後明らかに運動量が落ちていた点は来季1部で戦うという中では不安材料。代替わりするためこの日プレーしたメンバーがそのまま来季を戦う訳ではないが、このような不安材料を一つ一つクリアしていかないと1部で戦うことは難しいと思われる。

 

2016/10/29 The KSL Cup 予選リーグ第2節 ディアブロッサ奈良対高砂ミネイロFC

D奈良0-1(0-0)高砂(@桃山学院大学G)

 

前半まずは高砂ボランチの岩崎から早めに日野、寺本の2トップへ縦の低いボールを入れ攻撃のリズムを作っていく。対するD奈良はその出所である岩崎を封じ、逆に奪ってからの早いカウンターで新家がDFラインの裏を狙って決定的な場面を作るもシュートは枠の外。高砂も日野のミドルなどで反撃するもこちらもシュートは枠を捉えない。そのまま0-0で前半は終了。

 

後半に入って、高砂は柏木と三木を投入。FWに入っていた日野を本来のポジションであるGKに変更する策に打って出る。そして51分、高砂は右サイドからの折り返しが中央で混戦になるも最後は柏木が押し込み先制点。その後D奈良は山本を投入し、山本のポストからの攻撃とサイドの裏へ抜ける攻めを使い分けながら猛攻を仕掛けるも、高砂は日野を中心に守り切りそのまま1-0で試合終了。高砂が逃げ切って勝ち点を6に伸ばした。

 

何らかの事情もあったように思われる中発生したこの日の日野のFW→GKへのポジション変更だったが、結果としてはこれが奏功した。後半のD奈良の猛攻に対して恐らく前半出ていたGKの宮部では0で抑えきる事は難しかったと思われる。全体としては押される場面が多かったが、それでも最後のラインを割らせなかったのは流石日野といったところだろう。

 

D奈良としては攻撃の手数も質も上回っていた。しかしながら前半のうちに仕留めきれなかった事が結果として0-1という形になって現れてしまった。守備陣もあの失点シーン以外は高砂の攻撃に対応出来ていただけに、非常に悔しい結果となってしまったと思われる。振り返るとサッカーの難しさというものを感じさせる試合だったと感じてしまう。

 

 

 

2016/10/23 全国社会人サッカー選手権大会2回戦 いわきFC対VONDS市原FC

いわき4ー2(0-2、2-0、0-0)市原(@新居浜市営サッカー場第一グラウンド)

 

前半ペースを握ったのは市原。いわき守備陣のエリア内ファウルでPKを得ると、これを藤本が決めて先制。更に伊藤や棚橋を起点に前線の島田、二瓶が連動して動き、いわき守備陣を振り回しシュートコースを作っていく。いわきは1ボランチの新居から外にはたいて攻める目算に見えたが、これが機能せず中央で待つ1トップの菊池へ有効なボールが送れない。更に審判の判定にナーバスになる場面も見られ自ら主導権を放棄するかのような戦いぶり。31分には市原CKで安藝を完全にフリーにして追加点を奪われる。

 

2-0で迎えた後半、いわきはボランチの新居を下げると、長身CBの高野を前線に上げ菊池との2トップに。更に深くサイドを抉るのではなく、アーリークロスをゴール前に入れ高さで押し込む狙いに切り替える。これに対し市原はカウンターで前がかりになっているいわきDFラインの裏を二瓶が的確に突いていく。何度もパンチを振り下ろすいわき、それを耐え一発の関節で仕留めにかかる市原の構図は、市原が2度のチャンスを仕留め損なうと、一方的ないわきのパンチの嵐へと変わっていく。

 

何度も波状攻撃を仕掛けるいわきは64分、左サイドからのボールを最後は吉岡が押し込み1点差に。前線を変え運動量を増やし、左サイドバックをディフェンシブな濱谷に変えなんとかあと10分を凌ごうとした市原だったが、それをいわきの吉岡が打ち砕く。ゴールを背にして胸で受けるとそのまま振り返ってのダイレクトボレーを叩き込み、遂に同点に追い付く。

 

試合はそのまま2-2で延長戦に縺れ込むも二瓶を下げていた市原に効果的な攻めの手は残されていなかった。そして、延長後半3分いわき左サイド新田からのクロスに高野が合わせていわきが遂に逆転。更に吉岡が最後の攻撃に出た市原の裏を取って駄目押しの4点目。100分の激闘は4-2でいわきが制し準々決勝に駒を進めた。

 

いわきは印象としてはかつてのガンジュ岩手のようなサッカーを基本に、体幹の強さとスタミナにより強みを持つが、技術は追い付いていないサッカーといったところだろうか。戦術としてはまずサイドからという形を徹底している分、的は絞りやすい。それを打破する為にも、当たりの強さで徐々に相手の体力を追い込んでいくように圧力をかけ、何度も繰り返し攻撃を仕掛け疲弊させる。これまでの相手は単純な攻撃の繰り返しだけで通用した。今回それが通用しない相手と戦って、そのプラスアルファの部分が効果を持っていると確認出来たことは、明日以降、そしてその先を戦うにあたり大きな成果と言えるのだろう。

 

市原はここ数年と比べると前線の動きの幅も精度も上がっていた。特に島田と二瓶のDFを引き付ける動きとスペースを突く動きが効果的で、そこに持ち前の鋭いパス回しが加わり良い形を作り出していた。ただ、後半20分までのカウンターを仕留められなかったことで相手の心を降り損なったこと、そして運動量が落ちてからもカウンター一発に終始し、すぐに跳ね返されてまた守るというサイクルを続けて自分達で疲弊する流れを作ってしまったことが、結果致命傷となってしまった。勿論それを回避出来る手段を持ち合わせていなかったということも考えられる。だとすればそれは現状のチームの力の限界でもあったのだろう。その部分の真実までは自分には見切ることは出来なかった。